第三章 宴

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「ご機嫌麗しゅう、マルバ国王陛下。この度の当方の不手際、寛大なお計らいをいただき、心からお礼申し上げます」  お辞儀したまま、よどみなく口上を述べる。  でっぷりした体を揺らし、国王は人の良さげな笑みを浮かべた。 「いやいや、大したことではありません。それより王女どの、今宵は実にお美しい。セルトがお会いできるのを楽しみにしておりましたぞ」  周囲の女性の熱い視線を浴びて、くだんの王子の登場である。  国王の脇に控えていたセルト王子は前に出て、ひざまずき、阿梨の手を取った。 「阿梨王女、お久しぶりです。お会いしとうございました」  マルバ国正装の白い短い上着とゆったりした脚衣。宝石がちりばめられた豪華な胸飾りをつけ、長い金髪を背に流した優美な姿は、いかにも王族にふさわしい。
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