第三章 宴

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 人々は美酒と料理を心ゆくまで味わい、ひと段落ついた頃、広間の中央で音楽に合わせて男女が踊りだす。  セルト王子は阿梨に向かって手を差し伸べ、 「どうぞ、一曲、お相手を」 「わたくしは踊れませぬ」  阿梨が首を横に振ると、 「大丈夫、リードしてさしあげます。わたしに合わせて揺れていればよいのです」  柔らかな物腰での王子の誘いをむげに断るのも悪い気がして、阿梨は座っていた椅子から立ち上がった。 「さあ、わたしの肩に手をかけて」  言われた通り、そっと肩に手をかけ、二人は舞踊の人々の輪の中にすべりこむ。  セルト王子のリードは巧みで、もともと運動神経のよい阿梨は、苦もなく彼の動きについていく。
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