第三章 宴

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 何曲か踊った後、二人は人々の輪から外れた。 「とてもお上手でしたよ。それだけ踊れれば、どこの舞踏会に出られても引けは取りません」 「セルトさまのリードが上手いせいでしょう」  優雅に微笑んでみせたものの、窮屈な靴で踊ったせいで足が痛くなってくる。  どうせならもう少し履きやすい靴を用意して欲しかったのだが、セルトの選択は見た目優先らしい。  セルトは阿梨の我慢など露知らず、 「庭に出て歩きませんか。ここは少々賑やかすぎます」  この靴でさらに歩けというのか……顔がひきつるのを懸命に抑える。  かといって適当な断りの理由も考えつかず、何となくセルトに誘われるまま、広間を抜け出す。
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