第三章 宴

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 だが、違う。阿梨に向けるセルト王子のまなざしには、どこか曇りがある。  まっすぐに阿梨自身を見てはいない。長い間、阿梨だけを見つめてきた勇駿にはよくわかる。  阿梨の笑った顔も、怒った顔も、疲れた顔も、すべてを見てきた。  回廊を一回りして庭園の方に眼をやった時だ。遠くで阿梨の声が聞こえたような気がした。  勇駿は声のした方へ、庭園を全速力で走った。  よく見ると、茂みの向こうにひっそりと東屋がある。 「長!」  息を切らせ、すぐ近くまでやって来た勇駿の眼に映った光景は。  東屋の外へと、勢いよく投げ飛ばされるセルト王子の姿だった──。  
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