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琵琶湖の帰りのことがあり、どんな風に接していいのかもわからない。行かないと沢村さんに叱られるので予定通り出てきたけれど、気が重い。
バスを降り、ロータリーへ向かう。もう閉店している携帯電話ショップの前に中島君の車を見つけた。近づいていくと、中島君が降りてきた。
今日の私服はTシャツの上に襟なしの黒いジャケットだ。腕を捲ってみえる裏地の柄がトランプだ。袖のつきかたも変わっているし、ポケットの口のカーブがかわいい。七分丈のパンツと合わせてある。可愛くないと着られないデザインだ。
早速車に乗るように言われる。
「遥さん、今日はほんまに忙しそうやったな」
頷いた。
「寝とってええからな」
中島君はいつも通りだ。
「起きとくつもりやけど、寝たらごめん」
「とりあえず向かうで。途中コンビニによるし」
まず五条通へ行くと言っている。そこから一本道で日本海側を目指すらしい。
「あんまスピード出したないし、高速のらんと行くわ」
道のことは知らない。
何を話したらいいのかわからなくて、窓の外を眺めていた。
昨日、沢村さんが食事の時だけ紳士的な態度だった。京都市内だったら、お客さんや会社の人と出くわす確率が高いといっていた。まやかしだとわかっていても、うっとりしてしまう。
日曜までに返事をすることになっている件については、ほぼ答えを決めている。
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