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「兄貴二人はちゃんと医師免許とって実家の病院に勤務しとるんやけど、結婚して何年も経つのに子供ができへんで……姉は海外に行ってばっかやし当てにならんて、僕に見合いしろうるさく言うて来るようになってな……」 「家、病院なんや……」  それ以外の感想は述べにくい。  聞くと、京都では有名な医療法人だった。うちの銀行がメインバンクだった気がする。その割には、優遇されている感じはしない。 「中島君も、いろいろ大変そうやな……」  私は視線を外に向けた。JRの線路と並んで走っている。単線だ。田んぼだらけで街灯もほとんど見当たらない。  中島君も私なんかに告白してきて、最後の自由でも楽しむ気なのだろうか。  そのうち、銀行は辞めて、病院の事務長などにおさまるのかもしれない。  中島君の子供は医師になるのが義務付けられるんだろう。見合い相手も女医さんの気がする。  その気もなかったくせに、なんだか複雑だ。  だけど、少し気は楽になった。中島君は私にちょっかいを出している場合ではない。 「遥さん、眠いん?」 「そうでもないよ」  なにか話して欲しいと言われる。昨日の沢村さんのインパクトが強すぎて、他の話題が思い付かない。  でも、白いグランドピアノのことを思い出して少し気持ちが明るくなる。 「中島君は、ピアノ弾けるん?」 「一応は……家に先生来てたしな。僕はバイオリンの方が好きやけど」     
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