1+1

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 私は端の方にあるチーズをフォークでとった。 「美味しいです」  自然に、笑顔になる。なおさら、自分で取りにいけば、こんなことにはならなかったのにと思う。 「しかし、台無しやな。お前のとこのラップ口座もこんな感じやないやろな」 「えー、そんなことありませんよ」  運用を証券会社に完全に任せているようだ。こういう人は、銀行で投資信託などは買わないのだろう。 「ちゃんと、利益出てるやないですか」  原田さんが必死になっていう。 「あの、私、食べますから」  見た目はひどいが、千尋が言っていたように料理が美味しい。  ノンアルコールのカクテルも、甘すぎずすっきりしている。きっと、沢村さんの持っていたシャンパンも美味しいんだろう。  細谷さんの相手をするはめになるかと思ったら、実際は、細谷さんに次から次へと人が寄ってくる。細谷さんは、必ず、沢村さんと原田さん、そして、私を紹介してくれた。  男性には「彼女は僕が狙ってるので」と冗談ぽく付け加えていた。  確かに、銀行の中では見ることのない光景だった。  移動しなくても、異業種との交流はできていた。  沢村さんが、またカクテルを取ってきてくれた。     
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