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細谷さんと原田さんが、スキンヘッドの男性と楽しそうにしゃべっている。
「そういや、今日、河川敷でメーデーの集会あっとった!」
「ゴールデンウィークに入ると旅行に出る人がいるからちゃいますか?」
「まだ四月やのにメーデーちゃうやん」
銀行はカレンダー通りに営業するけれど、長いところは明日からしばらくお休みだ。
沢村さんが私の腕に軽く触れた。
「そろそろ、連れ出しますから、適当に話合わせてくださいね。それ、一気に飲んでください」
小声で言われた。頷く。グラスを口につける。アルコールの匂いがした。沢村さんをみた。私をみて頷く。
グラスを傾け、流し込んだ。私は、あまりのきつさに、むせてしまった。
沢村さんが私からグラスを取り上げる。
「大丈夫ですか!」
私の背中を軽くたたいてくれる。
「遥ちゃん、大丈夫か?」
細谷さん達の声が聞こえる。
咳が止まらず何も言えなかった。
「細谷さん、ちょっと出ますね」
「ああ、頼んだで」
沢村さんに、促されて外に出た。歩いているうちに咳は止まったが、まだ、のどに違和感があった。私は、手のひらで首を押さえていた。
「荷物は、持ってる分だけですか?」
私は頷いた。
そのまま、エレベーターに乗った。
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