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 調理場ものぞける。沢村さんが「大将」と、カウンター内に立つ男性に声をかけた。白い作務衣のような服を着て、腰から紺色のエプロンをしている。頭に巻いた手ぬぐいも和柄だ。カツを揚げているらしく、長い菜箸を持っている。  香ばしい香りと、軽やかな揚げ油の音だけで、胃があつくなった。 「沢村さん、いつも贔屓にしてくれはって、おおきに。奥があいてますよ」  一番奥は座敷になっていて、ついたてがあった。  沢村さんについて行く。  いつもよりヒールのあるパンプスだったので、脱いだ途端楽になった。向かい合って座る。嬉しいことに堀ごたつだ。テーブルの下で、足先が沢村さんの足に触れて、慌ててひいた。  沢村さんと目があう。 「無駄に体がでかくて、すみません」  私は「そんなこと……」と、頭を横にふった。  沢村さんが微笑む。それだけで、鼓動が速くなってしまう。 「ここは牛カツ専門なので……おすすめはおろしポン酢ですよ」  私はお任せすることにした。 「飲み物はどうしますか?」  ビール、日本酒、焼酎、それと、梅酒があった。ロック、お湯割り、水割り……サワーなら、飲めそうだ。 「梅酒がいいんですか?」  言う前から訊かれたので、顔をあげる。 「サワーがいいでしょう?」  頷いた。沢村さんは冷酒を頼んでいた。  沢村さんに「驚くくらい早く出てきますよ」と言われた。本当にすぐに運ばれてきた。揚げるのが数十秒らしい。 「揚げたてのうちに、どうぞ」     
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