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四月十五日
今日は、ふた月に一度の年金支給日だった。
お年寄り達は、シャッターが上がる前から並んでいる。
ATMが使いこなせないから、窓口に来る。
普段は中で為替担当をしているけれど、落ち着くまでロビーで誘導に徹する。伝票を書き終わる前に番号札を引かれたら困るからだ。
混んでくると、お年寄りにも優しい気持ちをもてなくなる。
名前と口座番号と、引き出す金額を書き込むだけの伝票の説明に追われる。円のマークを書いてもらうのになかなかわかってもらえずに『羊』みたいに書いてくださいなんて言う。ふた月に一度は書いているはずなのに、毎回同じところで躓く人が何人もいる。
昼休みに食堂へ上がる頃には、疲れ切っていた。
共同の冷蔵庫からお弁当を出した。電子レンジで温めていると融資課の中島君が入ってきた。コンビニの袋をぶら下げている。
「遥さん、今日は一番なんや」
中島君からは、なぜか名前で呼ばれている。去年彼が入行したとき、最初の教育係が私だった。弟のようにかわいいが、呼び方だけは困っていた。
「名前で呼ぶのやめてほしいんやけど」
「人前では呼んでへんのやし、ええやろ?」
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