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 水が豊富だからか、道沿いに時々工場を見かける。信号も少ないのですんなりと走って行ける。どんどん民家が減っていく。 「琵琶湖の北側に入ったで」  中島君がいう。私は「そうなんや」と返した。  そこから、車とあまりすれ違わなくなってきた。木が鬱蒼と茂っていて、時々、民家が数軒固まって建っている。  岸に沿って走るから、琵琶湖はすぐそこだ。走りながらのぞいただけでも、水が澄んでいるのがわかる。  時々、水泳場や、キャンプ場の看板がある。今は季節ではない。老人ホームもあるようだ。ここに入るのって、どうなんだろうと思う。自然には恵まれている。だけど、辺鄙すぎて家族はそんなに来られないんじゃないだろうか。  それだけならいい。絶対写真を撮りたくないような、廃墟別荘が建ち並ぶエリアがあった。中島君が「ここかあ」と言いながら車の速度を落とした。 「うわ、カーテンが破れとる」  ほとんどの建物で壁の色が落ちかけている。元はミントグリーンだったんだろうなとわかるけれど、ぼろぼろだ。ひどい物は窓が割れている。  殺人犯が潜伏していそうだと思った。 「ここ、怖い……」 「ほんまやなあ……、怖いって書いてあったけど、ここまでとは思わへんかった」  中島君は車の速度を戻した。 「いやあ、車を駐めて近くでみてみようと思っとったけど、とてもとても無理やな」  私は強く頷いた。  そこからは、ひたすら不安な状況が続いた。  まず、ひとけが無い。車が故障したらどうなるんだろうと思った。だけど、進むしかないのだろう。  戻ったらまたあの廃墟を通るはめになる。  結構きつい坂があった。高いところから琵琶湖を見下ろす。写真を撮りたくなる。  そのあと、連続のカーブの上に、角度のきつい下り坂にさしかかった。 「ここは、さっきの廃墟より恐怖やわ」  中島君がそう言うから、私は意味も無くシートベルトにつかまっていた。
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