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 長い長い山道を抜け、なんとか、人の住む場所に辿り着いた。 「ちょっと、休んでええか?」  私も緊張のまま車に乗っていたので、体を伸ばしたかった。  三時を回った。 「ここからは、もう、市街地を走るだけやから」  琵琶湖を一周がここまでの経験になるとは思っていなかった。多分半分を過ぎたところだと思う。それなのにほとんどやり遂げた気分だ。夜には絶対走れない道だった。 「済んでみれば、おもろかった」  私は首をひねった後、頷いた。なかなか見られないものを見た気はする。 「まだ早いし、彦根城をちらっとみてみようや」 「彦ニャンいてるかな」 「わからへん。そんなん興味あるん?」  どうでもいいと言えばどうでも良かった。  彦根へ向かう。  中島君はできるだけ、琵琶湖に近い道を選んで走っている。私は、運転をする中島君の横顔の向こうに見える景色を、眺めていた。  四時過ぎに着いた。お城の近くは、堀や石垣を見るだけでも楽しい。   五時まで開いているので中に入った。  天守閣が立派で、しばらく見上げていた。白い壁と黒い木板のコントラストが素敵だ。所々に施された金色もきいている。中に入った。中は壁も床も、古い木の独特の光沢で、落ち着いた。  閉門ぎりぎりまで中にいた。  中島君が、彦根市内を少し車で走りたいという。  城下町という言葉がよく似合う。街並みにも統一感がある。 「ここまで来たら、帰るのそんなにかからへんし、少しゆっくりしてもええやろ?」  彦根城から琵琶湖までは近かった。車を移動させる。食事をするには少し早いので、スタバに入ってコーヒーを飲んだ。  中島君が、グーグルマップで、今まで通った道を教えてくれた。  画面を指さして「廃墟があったとこらへん」と言った。  ここの近くには『鳥人間コンテスト』で有名な浜があるらしい。  たわいないおしゃべりをしているうちに、六時を回った。明るいから、そんな時間だと思っていなかった。 「悪いんやけど、少し仮眠をとってええかな」  車の運転は代われない。私は頷いた。琵琶湖の方を向いて車が駐めてある。中島君はシートを倒して寝転がった。
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