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 横をみる。本当に、目をつぶっている。  白い肌と真っ黒な長いまつげ、うっすらと赤みを帯びた頬、白雪姫みたいだ。  こんな風に生まれたかった。  少し、スマートフォンを触って時間をつぶしたけれど、五分もすると私まで眠くなってきた。  シートは倒さず、目をつぶった。  眠りに入る直前の、ふわふわとした心地になってきた。  頬をつつかれ、驚いて目をあける。  目の前にひろがる空が赤く染まっていた。 「外に出よ」  車からおりる。  琵琶湖の波は穏やかだ。風が頬を撫でる。  私は一度目を閉じて、大きく息を吸い込んだ。目を開ける。  沈んでいく太陽を、こうやってじっくり見るのは久しぶりだった。  向こう岸まで漣が続き、黒く塗りつぶされた山の上で、空が紫がかっている。雲の端は金色に輝く。  湖面に光の道ができた。    中島君と黙ってただ並んでいた。太陽が山の向こうに消えるまで眺めていた。 「帰ろうか」  声をかけられて、頷いた。  途中、近江八幡で食事を取った。  最後、浮御堂にもどったので、本当に一周した。  京都市内に戻った頃には、十時を回っていた。家の近くまで送ってもらう。     
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