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家のすぐ近くに、学校があり、そこで駐めてもらった。少し陰になっているし、人目に付きにくいと思った。
街灯は一応あるけれど、暗い。だけど、走れば一分もかからないから大丈夫だ。
中島君に、お礼を言う。
「楽しかったんなら良かったけど、ほっとんど名前で呼んでくれへんかった」
すっかり忘れていた。
「中島君は、中島君やもん」
「なんだかなあ」
中島君がシートベルトを外した。
私も、もう下りるので外そうと、体をひねって留め金に手をかけた。
中島君が、私のあごに触れた。何が起こっているか考えているうちに、唇がふさがれる。私は瞬きもできず、目の前にある中島君のこめかみをみていた。
胸が苦しくなる。
私はうつむいた。
まだ近くにある、中島君の息づかい。頬に触れる手のひらが、思っていたよりずっと大きかった。
「僕はずっと、好きなんやけど……。これで少しは意識してくれる?」
何も言えずいた。
中島君が私のシートベルトを外した。
「砂丘に行くんは、もう約束やし」
私は頷くことができない。
中島君は私の頭に手をのせて、無理やり頷かせた。
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