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「おやつ、こうて帰ろ。自分、どんなんが好きなん? デパ地下寄る? そおか、コンビニでええか?」
私は、すぐにこたえられない。
「しんきくさいな。はよ帰りたいし、コンビニにすっで」
沢村さんに腕を引かれた。コンビニに入り、デザート棚の前に立たされる。
「どれがええの? 何個でもええからはよ選んでや」
私はもたもたすると沢村さんを苛立たせると思い、目の前にあるプリンを手に取った。
「他は?」
「もう、これだけで……」
取り上げられた。沢村さんがかごに入れる。
それから、棚にあるデザートを五種類ほど取っていった。
「後から欲しがっても、分けたらへんしな」
そう言って、意地悪に笑った。
沢村さんのマンションには、コンビニから五分ほどでついた。
会社からでも十分圏内だ。
九階建ての最上階だ。マンションなのに、玄関スペースが広い。
リビングに通される。最初に目に着いたのは、真っ白なグランドピアノだった。うちにもピアノはあるが、アップライトだ。
それにしても広いリビングだ。八畳あるうちのリビングの倍以上ある。ピアノだけでなく応接セットも置いてある。三人掛けのソファに座って待つように言われる。
とにかく落ち着かなかった。
「コーヒーでええよな?」
訊かれて、頷いた。沢村さんが、私をじっとみている。
「やっぱ、こっちに来て」
手招きをされ立ちあがった。
キッチンへ連れて行かれる。
沢村さんが、キッチンの棚や引き出しを次々あけた。
「ケトルはここ、ドリップの道具一式はここ、砂糖はここ、食器はここ、後、豆とミルクは冷蔵庫な」
私はとにかく頷いた。沢村さんにケトルを渡された。おしゃれなジョーロみたいな形をしている。細く伸びた注ぎ口をみていると「何ぼーっとしてんねん。まずフタ開けな、水が入れられへんやろ」と言われた。
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