2+1

34/50
前へ
/185ページ
次へ
「海綿……『メクール』か、グリセリンはあるんですか?」  沢村さんが「なんやそれ」と首をかしげる。 「こんな枚数……指が乾いてしまうから、何もなしでは数えられません」 「銀行員でもあかんか」 「それに、さっきのスピードを維持できるのは、二千万円くらいが限界です」  沢村さんが、頷いた。 「何回かにわけてもらってええんやけど」  二千万ずつ数えたら、五回以上かかる。私は、考え込んだ。 「だいたい、どうして銀行にあずけないんですか?」 「信用できひんやん」  私は沢村さんが理解できなくて、首をかしげた。 「私に金庫の番号教える方が、よっぽどリスクでしょう」 「なんで?」  こう返ってくるとは思わなかったら、私は何も言えなかった。 「遥のことは、自分で信用できるか判断したんやからかまへんやん。銀行の中にどんなやついてるか全員は把握できひんやろ」  そりゃ、たまに、横領する人もいる。 「凄腕のハッカーにデータいじられたら、預金がゼロになるかもしれへんのやで」  確かに、今はデータで管理されている。最近、インターネットバンキングのセキュリティについて、通達が出ていた。 「金庫の中をみて、遥は最初に嫌そうな顔をしたやん。それだけでほんま、俺の目に狂いはなかったと思えたで。細谷さんに媚びを売らない女は初めてやったし」 「はあ」  私の見る目は狂いすぎだ。
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1129人が本棚に入れています
本棚に追加