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半分になるころには、目が痛くてたまらなくなった。横読みは、目が瞬間的に数えられる4枚を手でよけていく。
4700万円数え終わったところで、痛みにたえられなくなった。顔をあげる。沢村さんと目があった。
「ごめんなさい」
目をつぶった。お札を触った手で目の回りには触れたくない。多分目が乾いているんだと思う。
「目が、限界で……少し、休んでいいですか?」
目を閉じたままいう。
突然体が温もりに包まれた。私は手に持ったままの札束を放してしまった。
目を開けると、沢村さんの肩が目の前にある。
「遥……一緒に暮らそう。もうお前しか考えられへん」
唐突すぎて、私の頭は思考停止に陥った。
沢村さんの香りは、石鹸でも花や果物のような甘いものでも、爽やかなものでもない。どこか幻想的で深い。これだけ近づいてやっと微かに鼻腔を刺激する。何の香りだろう。呼吸の度に、感じる。
しかし、今は香りの正体よりも、確かめなければならないことがある。
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