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「あかん、理由は?」
理由なんて訊くまでもないと思うのに、沢村さんは、友達同士のルームシェアのような軽いのりで言う。私は気づく。沢村さんはきっと、そう思っている。
「私、今実家から通っているんです。こんなの、まず両親に話せません」
沢村さんは不服そうな顔をした。
「もう、二十六やろ」
「私が、自分で家を借りて出るって言うなら止められません」
だけど、男性の家に居候するなんて言えるわけがない。
「育ちのええこはいろいろ大変やな……」
沢村さんは腕組みをして考え込んでいる。
「そうやなあ、あっ、結婚したらいけるんちゃうん」
心臓が止まるかと思った。
「遥、婚活中やろ。俺にしといたらええやん」
「そんなの、おかしい……」
私は訳がわからなくなった。
「何が? お見合い結婚みたいなもんやと思えば、どってことないやろ」
私はお見合い結婚をしたいわけではない。
「恋愛結婚を望んでんのやったら、まず合コンやろ。婚活パーティはそういうことやんか」
「そんなあ……」
「ひとまず仕事モードの俺のことは、のこのこついてくるくらいには気に入ってたんやろ」
『のこのこ』なんてひどい。かなり、傷つく。
「遥は、少し自分のこと整理して考えた方がええで。本気で結婚したいんやったら、細谷さんとはもっと話すべきやったし、中島海渡君のことやってもっと前向きに考えるべきやし」
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