2+1

40/50
前へ
/185ページ
次へ
 少し休んで、目の痛みはひいた。 「とにかく、きりのいいところまで数えます」  床に散らかしてしまった束をもう一度数えた。それから、五千万円になるよう残りを数える。私が扇形にお札を広げた時、沢村さんに声をかけられた。 「ちょっと、こんなんしてみてや」  左手で顔を扇いでいる。私は渋い顔をしてみせる。 「一回だけ、ええやろ」  本当にこの人は、私から信用を得る気があるんだろうか。  ため息をついたあと、左手に持った紙幣の扇で自分を扇ぐ。サービスで沢村さんも扇いであげた。 「バブルやバブル」  嬉しそうにしている。バブル経済なんて私達世代にとってはただの『歴史』だ。 「ほんまキレイにひろがるもんなあ。また、バッサバッサって音もええし」  あの音がならせるようになったときは、嬉しかった。 「どうも」
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1129人が本棚に入れています
本棚に追加