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「また、どんなんやったか聞かせてや」
『友達』どころか『女友達』のノリだ。
沢村さんはお金を金庫にしまって扉を閉じた。
「遥には、めっちゃ楽しませてもらったし、ご褒美あげよ」
沢村さんは私を残して部屋を出ていった。
タオルを持って戻ってくる。クローゼットの扉を開けて、私を呼ぶ。
「好きなネクタイ選んでええよ」
もしかして、仕事モードになってくれるんだろうか。幻だとわかっていても、かなり嬉しい。
素敵なネクタイばかりで迷う。少しイメージと違う、ピンクがかったものを選んだ。
「ふーん、そんなんが好み?」
「可愛いのも似合うのかなあと思って」
沢村さんが目を細めた。意味ありげに笑うってから、私の背後に回る。
「ちょっとのま、じっとしといてや」
さっき持ってきたタオルで目隠しをされる。そんなことしなくても、着替えを覗いたりしないのにと思った。
沢村さんが後ろから私の両腕を取った。
なんだろうと思っているうちに、後ろ手に手首を重ね合わせられた。驚いて腕を動かす。
沢村さんの大きな手は片方だけでも簡単に私の両手を固定する。手首に布が巻き付いていく。
さっきのネクタイだと思った。
「何するんですか!」
体を動かした。沢村さんが手を放したので、バランスを崩して倒れこんだ。
手が使えないから、そのまま床に転がった。
私は自分がどっちを向いているのかもわからなかった。わかったところで、後ろ手に縛られている上に、この部屋には鍵がかけられている。
「やめてください」
沢村さんは黙っていてどこにいるかわからない。
「これ、ほどいてください」
必死で訴えているのに、なにも言ってくれない。
「インパクトに欠けるなあ」
呟いた。
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