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「沢村さん」
声が聞こえた方に話しかける。
「大人しいしてや」
私のブラウスのボタンを外し始めた。身をよじる。逃れられなかった。
沢村さんは一旦はなれた。
「うーん」
首もとに手が触れる。ブラウスの襟を引っ張った。左肩があらわになったのがわかる。腕を縛られているから、袖は抜けない。
スマートフォンのシャッター音が聞こえた。
「やめてください」
何度も聞こえる。
「やめてください」
他に言葉が思い付かない。
「なんで嫌がるんや? 」
沢村さんが私の目隠しを外した。顔を覗き込まれる。
目を覆っていたタオルがなくなったから、涙がほほを伝って、顎の下に流れていく。
「『 女子的盛り上がるシチュエーション』なんちゃうんか……」
「何言ってるんですか、手を……ほどいてください」
沢村さんはタオルで私の顔を拭く。
「して欲しい言うて、頼まれたことあんねやけど……」
不服そうな顔をする。
「こんなこと、その人としたらいいでしょう!」
こんな目に遭わされた上に、他の女の人の話なんかされて、叩きたいくらいなのに腕が動かない。
「いやいや、無理やし、絶対、無理」
私のブラウスを整えて、ボタンを留めはじめた。
「とんだ、がせネタやんか、あのおばはん」
沢村さんが不機嫌そうに言う。
手もほどいてくれた。
涙はまだ止まらない。自由になった手でタオルを拾い、顔をおさえた。それにしても、ひどすぎる。
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