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四月上旬  今日は、閉店後の締め上げで勘定があわず、残業になった。  銀行にとって、一円でも現金が合わないことは大きな問題だ。入金機の中を探したところ、機械の中のわずかな隙間に挟まっていた。通常は、センサーで検知できる不具合だ。今回は、そのセンサーに異常があった。  余計な神経を使い、疲れた。歳の近い同僚、加納千尋と、夕食をとることになった。  京都の四条烏丸あたりには、金融機関が集まっている。メガバンクや信託銀行、証券会社に、大手生保のビルが並ぶ。私達は地方銀行で働いている。 支店の近くのお好み焼き屋へ行く。  のれんをくぐり、引き戸を開けると、楽しげな笑い声が溢れでてきた。今の気分とのギャップに戸惑う。  はつらつとした店員に案内されテーブル席につく。席は八割ほど埋まっていた。店内には昔の歌謡曲が流れている。  千尋が「平日夜のお得セットがある」という。定番お好み焼きから一品選べて、グラスビールとサラダがつく。考えるのも面倒だ。「同じのんでええわ」とこたえた。  注文したセットが運ばれてくるのを待つ。そこで、千尋から『異業種交流会』に誘われた。     
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