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「うん、例えば、現実の友人に、近所の山に登るように伝えろとか、母親に庭に枇杷の木を植えるように伝えろとか。それが、まったく知らない叔父さんだったり、おねえさんだったり、とにかく見知らぬ誰かなんだけど、顔ははっきりと覚えている。しかも、全て意味の無い荒唐無稽なことばかり。最初は変な夢を面白がって記録していたけど。でも、だんだんと夢が僕に指示をしてくることが現実で果たされないと、夢の中で僕に詰め寄ってくるようになった。何でお前は、言う通りにしないかと。」
「えっ、でも、それって自分の夢じゃ...。」
「そうは思っても、夢から覚めると、強迫観念に駆られるんだ。本当にそれを伝えなければならないような気がしてくるんだよ。」
僕は、先輩はもしかして病んでいるのではないかと思った。
それをなるべく悟られまいと、話に耳を傾ける。
「君は、僕を狂ってるって思うかもしれない。でも、一つだけ、僕の夢に救いがあったんだ。」
「救い?」
「うん、それが君だよ。ヒロキは、僕の夢に出てきて、そいつらの言うことを聞くなと言ってくれたんだ。もしかして、君が僕の救世主になってくれるかもしれない。そう思った。」
「でも、僕には何もできませんよ。きっと。お力になれそうもない。」
「僕が願うよ。君に僕の夢を見て欲しい。そう願えばきっと、僕らは同じ夢を見れるはず。ねえ、明日、土曜日だし。僕の家に、泊まらないか?」
「えっ!」
僕は、自分の顔が真っ赤になり、心臓がドクンと跳ね上がるのを感じた。
いきなり、好きな人の家にお泊りだなんて。先輩は、僕が先輩に好意を持っていることを知りながら、そんな提案をしてくるということは、まさかと思いつつも、期待してしまう。
「いいんですか?」
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