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僕は、意味深な言い方をして、先輩を試してみた。
「うん、遠慮はいらないよ。家にも連絡して、君の分の夕飯も用意させるよ。」
ああ、やっぱり。僕は、変な期待をした自分を恥じた。
友人として僕は招かれるのだ。
その夜、僕は、先輩の部屋に布団を敷いてもらって、先輩のベッドの隣に寝ることになった。
それでも、僕は、少し甘い期待を捨て切れなかった。
布団に入って電気を消すと、先輩のベッドから白い腕が伸びてきた。先輩の腕だ。
そして、その腕は僕の布団に伸びてきた。ドキドキした。
「ヒロキ、手を繋ごう。」
「えっ!」
僕の心が舞い上がる。先輩ももしかして、僕のこと...。
「手を繋いだほうが、きっと同じ夢をみることができるよ。」
少し落胆。でも、先輩の不安を少しでも僕が和らげることができるのなら。
僕は先輩の手を握り返した。緊張しているはずなのに、僕は手を握ったとたんにあっという間に眠りに落ちた。
夢の中で僕は先輩を探していた。
霧の深い灰色の世界にぽっかりと、大きな建物が浮かんでいた。
それは、霧に浮かんでいるのではなく、霧と同じ色をしていたために、蜃気楼のように見えただけで、近づくに連れて、その輪郭をあらわにした。
僕は、誘われるように、その建物に入っていく。
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