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広いエントランスには、カウンターが一つあるだけで、誰も居なかった。
どうやら、そこはホールのような施設であり、僕は、数ある扉の中の重厚な扉を一つ開けた。
すると、突然、耳にはオーケストラの演奏が飛び込んできた。
ステージでは、オーケストラが何かの曲を演奏している。聞いたこともない音楽だ。
僕はステージにすぐに違和感を感じた。オーケストラがまず、人間ではない。
ブリキの動物の玩具が演奏しているのだ。指揮をしているのは、人間。
後姿からして、まだ若い男性。男性というより、少年だ。
近づくに連れて、それが誰かということを認識する。
「先輩?」
僕が声にすると、演奏はピタリと止まって、その人は振り向いた。
「僕の世界へ、ようこそ。」
先輩は、怪しく笑う。
指揮棒を指揮台に置くと、先輩はゆっくりとステージから降りてきた。
それを追うようにスポットライトが移動して、僕と先輩を照らす。
「ねえ、ヒロキ。ヒロキは自分を理解できない世界は嫌いだよね?」
僕は困惑した。先輩は何を言ってる。
「ヒロキは何も悪くないよ。男の子が好きで何が悪い?人は十人十色というだろう?いろんな性格や恋愛のカタチがあって当たり前なんだ。」
先輩が僕の手を握る。
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