1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんなさいね、私ってぼんやりしたり、いきなり変なこと言ったりするから、主人にも娘にもポカーンとされちゃうのよ。またやっちゃったみたい、嫌ねえ」
「あ、あの、気にしていませんから!」
「私はね、ここで星屑祭りに来てから、きれいなものは、きれいなままで受け入れた方がいいんじゃないかなって、思えるようになったの」
「そう、ですか……」
「招待状が来たのは、佐野さんぐらいの年だったかな?なんだか、いろいろなものが急に嫌になっちゃって、娘はまだ赤ちゃんだったんだけど、娘のことも可愛く思えなくなって、夫のことも嫌な部分ばかり見えて、まだ結婚していない友達や、結婚していても、子供がまだいなくて夫婦で自由にしている友達が羨ましくて、でも私は失敗したんだ、負けたんだって思いたくなくて、あら探ししたり、約束を急にキャンセルしたりして、私なんか、私だけが、ってもがいていたの」
いまの私みたいじゃないですか、と喉元まで出そうになった。ぐっと飲み込んで、続きを聞いた。
「ここに来てね、星屑が髪の毛や肩に降ってきて、きれいで、娘が喜んでいて、笑っていて、私はそれでいいかな、それがいちばん嬉しいことなんだなって、思えるようになったの。さっき、佐野さんブランコに座って、どんよりしていたでしょう?寂しそうというか、つまらなそうというか」
「え?見ていたんですか?」
「ごめんなさいね、話しかけたほうがよかったかしら?その姿が、はじめて星屑祭りに来たときの私とそっくりで、おかしくて、広場のほうに、いつ来てくれるかなって、じっと見ちゃったの。私って、言葉や行動が足りないっていうか……放っておけないけれど、おせっかいはできないたちなのよ。だから、相手が動くまで、待っているの。余計なお世話だって、差し出した手をはねのけられるのは、いい気持ちしないじゃない?」
「確かに、そう、ですよね……」
言動とか、普段の評判とか、店長がこぼしている不満とは違う森本さんのやんわりとした、でもとっても優しい、しっかりとした気持ちが伝わってきた。
最初のコメントを投稿しよう!