1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえ、岡本くんのところにもきた?」
「何がですか?」
「その……なんとか祭りの招待状みたいな……」
しどろもどろになっている私を見下ろして、岡本くんは「ああ、郵便受けに入っていましたよ」と答えてくれた。そして、エプロンのポケットから招待状を取り出した。
「僕はここが地元なので、子供のころから行っています。今夜は、店長しだいかもしれませんが、仕事をなるべく早く切り上げて、行こうと思っています」
「そうなんだ、行けるといいね」
「今夜はどこの店も星屑祭りが優先です。この街に住んでいるみんなが、楽しみにしているお祭りですから」
「店長のところにも、招待状は来たのかしら」
「さあ。店長は気むずかしいですからね」
店内に、岡本くんを呼び出すアナウンスが流れた。私たちにしかわからない言葉で、店長室に来てほしいと、放送している。岡本くんは、肩をすくめた。
「嫌な予感がするなあ、でも、終わるまでには必ず行きます」
お疲れ様でした、と岡本くんは私にぺこりと頭を下げると、小走りで行ってしまった。
背中を見送っていると、ぞくぞくとお母さんたちが、交替でやってきた学生やフリーターの若い子たちに仕事を任せていく。
「お疲れ様でした、ほら、もう時間よ」
「あ、お疲れさまでした……」
時計を見ると、もう4時になっていた。
休憩時間を挟んで、私とパートのお母さんたちは、4時で仕事が終わる。
「おはようございます」
高校の制服の上からエプロンと、三角巾を身に付けた遅番の由美ちゃんがやってきた。
私も彼女に仕事を引き継いで、更衣室へ行った。
最初のコメントを投稿しよう!