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店長室からは、ぐだぐだと脈絡のない店長の言葉が、漏れ聞こえてくる。
岡本くんは、たぶん気にしていない。
店長だけがひとりよがりでわめいていて、時には、その声が店の中にまで聞こえてきて、「なにかあったの?」と訊かれることもある。
すいません、店長が怒っているんですとも答えられずにむにゃむにゃとやりすごして、受け流す。
恥ずかしい。
店長より、岡本くんのほうが信用できる。
口だけの偉い人なんか、どこにでもいる。しかも、信用できない。
どうしようもない相手だって、愚痴を言う声も聞こえる。
岡本くんのほうが、みんなに好かれている。
店長は、同じぐらい嫌われている。
私たちが決まった時間で帰れるようにと、岡本くんはいつも、気を遣ってくれている。
一方、わざと思い出したように、のそのそと店長室から出てきて、じろじろ周囲を見ながら、商品の並び方を変えさせようとしたり、掃除していない箇所をねちねちと注意しはじめる店長とは、全然違う。
忙しくなると、すすんで手伝ってくれる岡本くんを見習って、てきぱき動くべきなのは店長じゃないのだろうか。
社員でもなんでもない、私が考えても仕方がないことだけど。
丘の上にある公園は、マンションから私の足で歩いて20分。なんとなく、星屑祭りの会場まで来てしまった。
けっこうな距離で、そのうえ寒くて、鼻と頬が痛くなるほど、冷えてしまった。化粧直しも、夜に出掛けるのも、久しぶりかもしれない。
皮脂で顔がテカテカになったとしても、誰かと約束もしていないから、そのまま。安く買える惣菜とお弁当を買って、とぼとぼと、誰も待っていないマンションへ帰るだけ。おもしろくも、なんともない。
そんな、言い訳じみた理由を頭に浮かべては、空に向かってため息を吐き出してみた。
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