今夜、星屑が積もる頃に

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 マイナスイメージな性格や行動とかは、私じゃなくて、いつも相談する側にいた菜見子の特権だったのに……いや、特権って言い方も、おかしいかもしれないけれど。  寒い。頬に触れた髪の毛の、毛先まで冷たい。  ぐっと身を縮ませて、私は露店で賑わう広場を遠目に、誰にも注目されていないブランコに腰かけた。おしりが冷たいけれど、立っていると、だんだんと足が疲れてきて、ただでさえ寒いのに、どんどん辛く感じるような気がしたからだ。売店も、興味をひくような感じじゃない。だいいち、買い食いもあまり好きじゃない。子どもの頃、あんなに楽しかったのに。  帰るとき、いつもと同じように、惣菜を安く買って、買い置きしていたバターロールを主食に、ひとり寂しくもそもそと、部屋のなかでひたすら無言で食べて、押し込むように夕飯をすませたから、お腹も空いていない。  だから、露店で売っている焼きそばやベビーカステラ、じゃがバターなどの食べ物も買う気がしない。もしお腹が空いていても、買う気になれない。  値段もけっして安くないし、子供連れの家族に押されたりしてまで、並ぶのも面倒だ。  それにしても、寒い。つま先がしびれてきた。  帰った方がいいのかな。帰ろうかな。  帰ってもどうせ、マンションの部屋は暗くて寒い。自分で部屋をあたためて、ユニットバスの狭い浴 槽に全身を押し込めるようにしてつかって、無理矢理に汗をかいて、ベッドにもぐりこんで、眠るぐらいなものだもの。  だったら、賑やかなだけ、ここのほうがましなのかな。  答えのないぐるぐるした渦が、頭の中で回転する速度をはやめて、密度を濃くしてきた。  あたたかい飲み物……たとえば、甘酒みたいなものが欲しくなってきた。  指先も冷えて、じんじんと痛む。喉が乾燥してはりつき、ひりひりとしていた。マスクをしてくればよかったと、後悔した。
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