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微妙に痛くて、おとなげないって思ったけれど、舌打ちまでしてしまった。
広場に集まっていたひとたちが、わあっとと声をあげて、空を見上げていた。
どんよりと空に覆い被さっていた、鈍い光を含んだ雲が、さっきよりも強く、あかるく光っている。
そこからパラパラ、パラパラ、ちいさい粒が地面へと落下している。
コートの肩や、髪の毛が光っていた。落ちてきた粒がそこに、くっついていた。
そっとつまむと、それは2ミリぐらいのおおきさをした立方体で、てのひらできらきらと光っていた。
雲が含んでいた、光の正体らしい。
広場の喚声が、一段と大きくなった。
私は広場の方へ、そろりそろりと歩いていった。
賑わっている広場は、子供たちが、家から持ってきたのだろうか、バケツや洗面器、コップなどを両手で抱えあげ、精一杯、背伸びをしている。
そのなかに、雲から落ちてくる、光る粒を集めようとしているのだろう。
「あら、佐野さんじゃない」
「森本さん、お疲れ様です」
「お疲れ様です、なんて嫌ねえ、仕事じゃないんだから」
パートのお母さんたちのひとり、森本さんが娘さんを連れて、やってきていた。
娘さんは自分専用だろうか、アニメのキャラクターがプリントされた、ピンク色の洗面器を両手で抱え上げて、いっぱいに背伸びしている。
「娘さん、楽しそうですね」
「まだ小学生だっていうのに、香水つけたいとか、おしゃれしたいとか、おませなことばかり言っているけれど、やっぱり子供ね。星屑祭りになるとはしゃいじゃって」
「かわいいじゃないですか、素直に喜べるって、素敵なことですよ」
「そうね、大人になると忘れちゃうかもしれないもんねえ」
森本さんも、髪の毛に光の粒をまといながら、満面の笑顔を浮かべた。
私も、つられて笑った。
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