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突然始まった身振り手振りの語りは朗々と響くものだから、いっそ舞台役者のようになる。だが次には頭抱えて悶絶だ。どんな乱心状態だ。
「兄貴の恋愛事情なんて知らないよぉ! しかもこのマイスイートハニーどんな可愛いフィルターかかってんだよ! 重量百キロ超えは流石に許容できないよ! 上から110、100、130をボンキュッボンって言うなぁぁぁぁ! しかもケーキ二つしか食べなかったって単位違うよ。ピースじゃなくてホールだよ! ダイエットしろよぉぉ!」
「ボ……ボリス…」
言い切った、スッキリした、ずっと釈然としなかったんだ。
兄の趣味をとやかく言いはしない。ふくよかな女性が好きだというのもいい、個人が幸せなら。だがそれを自慢げに惚気るのは勘弁して欲しい! 月に二回は安息日に呼ばれてこれを延々数時間聞くんだ。
しかも特殊フィルターでもかかっているのか、話に聞くかぎりだとどんな可愛いお嬢さんかと思うだろ? 実物凄いんだ! 太いというよりもゴツい! ムッキムキで眼光の鋭いお嬢さんを「これが俺のマイハニーだよ」って幸せ満面に紹介されたこちらの気分は流石に「嘘だぁぁ!」の絶叫でしかなかった。
吐ききったら力が抜けて、次にはもう泣きたくなった。
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