春爛漫にも悩みはある

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 溺れるように抱き合ったばかりだから思える。確かめるようにキスをするから感じる。性欲処理じゃないと、最初の頃にはっきりと言った。だからこそ、ランバートはいつも余裕がなく、貪欲に欲してしまう。あの人の全てを求めるように。  ゼロスは赤い顔のまま考えている。 「確かめてみなよ、きっと感じられるからさ」 「…レイバンが大人に見える」 「俺ってこういう事は先輩だもん。なっ、ランバート」 「ははっ、確かにな」  ファウストに会いたくなった。多分それは、それぞれが思う部分だ。  ふと見ると、ハリーはコンラッドに抱きついたままいつの間にか寝ている。随分と子供みたいな嬉しそうな顔で。 「ジェイさんに会いたくなったな…。明日、甘えてみよう」  レイバンが言って、酒を飲む。ゼロスは空いたグラスに黙って酒を注いでいる。その側にランバートも座って、三人で幸せそうなハリーを見つめて苦笑した。
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