3人が本棚に入れています
本棚に追加
大通りに戻ってきた。
適当に左右を見渡してみる。ブティックにファストフード店、コンビニ……と、いろいろ並んでいる。様々なお店があるのは、見るのは楽しくていいんだけれど、何処に入るか迷ってしまう。
決まらないままふらふら歩いていると、目先に人だかりが見えた。救急車も止まっている。
あそこは交差点みたいだから、事故でも起きたのだろう。
なんとなく気になって、人だかりに近づいてみた。人が多くて全然前が見えない。背伸びして何とか見ようとしていたら、隣の女性達の会話が耳に入ってきた。
「私見ちゃったんだけど、1人血だらけの人がいてね」
「でも片方の信号無視のせいなんでしょう? 速度も結構出てるでしょうよ」
「いや他の人は意識はあったのよ、それが1人だけ」
「打ちどころが悪かったのかしら」
「それがね、エアバッグの故障らしいのよ」
「それはまあかわいそうに」
話を聞いた……というか勝手に聞いてしまったが、やはり事故みたいだ。それも信号無視。
エアバッグの話は何処からの情報なのだろう。信憑性があるかどうかは怪しいが、まあそういうことにしておこう。
それにしても1人だけ……
そんなことを考えていたときだった。
悲しいというのか、怖いというのか、そういう感情が込み上げてきて、急にここから立ち去りたくなった。
早足で人だかりから離れて、横断歩道を渡った。
その先には派手な広告が目立つデパートが見えた。
そんなデパートを見ながら、歩く速度を緩めて、考える。
急に自分はどうしたのだろうか。
……僕は結構感受性が豊かなのかもしれない。ちょっと今泣きそうだし。
不思議と納得してしまう。これも夢だからなのか?
何だか嫌な夢だな。
……よし。デパートに行こう。多少は気が紛れるといいな。
最初のコメントを投稿しよう!