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途方もない時間を
貝になったつもりで
息をする
聞こえてくる
さざ波
あの日の出来事
夢の中
瞬きのあいだの
戯れでした
歩きました
何度も倒れました
疲れて
悲しくて
声をあげずに
泣きました
それでも。
あなたの背中
大嫌いだった
大人になる
大人にならなくちゃ
離別も忘却の彼方
いつしか
息の仕方も忘れました
歩きました
迷いも殺しました
怖くて
寂しくて
終わらないことが
一番の残酷さでした
いつしか
息の仕方も忘れました
考えることもやめました
あなたのいない
この世界で
歩いてゆくために
大人になりました
それでも
それでも、僕は。
こうやって
書くことをやめられず
書かずにはいられず
カッコ悪いけど
あなたを思わずにはいられませんでした。
あなたがいなくなってから
あなたを形作るすべての形容詞を
思い付く限り
書き留めました
それらはすべて空しい努力の一つでした
日常に飲み込まれて
波間の藻屑になる
希望さえも届かない深海ふかくに
僕は沈んで
いつしか
あなたの声も忘れました。
それでも
それでも、僕は。
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