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――1ヶ月後、4月になり、いよいよ入社式。
服装は自由。自由と言われると、逆に試されてる感じでなんか嫌だ。
俺はデニムにラフなジャケットを着る。インナーはTシャツだ。これで十分だろう。
家族3人と俺で食卓を囲む。スクランブルエッグ、サラダにご飯。
「圭市君、たくさん食べていきなさい」
「いいよ、伯母さん」
「圭市、遠藤力(えんどうちから)に宜しくな」
「和事兄ちゃん、ありがと。完全にコネだからね」
「遠藤はちょっと気難しいところがあるから上手くやれよ。スポーツカーだと目を付けられるぞ」
「逆に人気者になってやるよ」
俺はGTRに乗り、飯松ウィステリア工業へ向かう。明暗寺から車で20分程だ。入社式開始は10時。10分くらいは余裕がある。
3月の間に何度か飯松ウィステリア工業への道順を確認してる。ほぼ国道を通るから迷うことはない。
入社式もシティでやればいいのにな。まあ、車とロボットの部品を造る会社だから、仕方ないか。
飯松ウィステリア工業に着くと、【新入社員は左の駐車場に停めて下さい】と看板が立っていた。
既に数台の車が停まっており、人がちらほら居る。
俺はコネだから、入社試験を受けていない。御曹司の遠藤力を思いっきり利用してる、計画的に。顔は知らないけど。
俺はGTRを駐車場に停めると、緑色のユニホームを着た若い男性社員が来た。
「おはよー。BNR32か、良い車に乗ってるね~」
「おはようございます」
「君は新入社員だよね?」
「そうですよ。松本圭市です」
「ああ、君か。遠藤のコネで入ってきた大物は。俺は渡辺享(わたなべとおる)だ」
「宜しくお願いします」
「車には詳しいから、何でも聞いてね」
「ありがとうございます」
「構内の道を挟んだ向こうにある2階建て棟が事務所兼ロッカールームだよ。1階の入り口で新入社員に社員証を配ってるから」
「行ってきます」
俺はロッカールームの入り口へ歩いて行く。左側を見ると、緩やかな斜面に大きなプラント4つ確認できた。
「新入社員の方ですね? お名前は?」
「松本圭市です」
オバチャンOLが社員証を渡してくれた。
「この社員証はカードキーにもなっているので、なくさないようにお願いします」
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