03(飯松藤工業)

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――1ヶ月後、4月になり、いよいよ入社式。  服装は自由。自由と言われると、逆に試されてる感じでなんか嫌だ。  俺はデニムにラフなジャケットを着る。インナーはTシャツだ。これで十分だろう。  家族3人と俺で食卓を囲む。スクランブルエッグ、サラダにご飯。 「圭市君、たくさん食べていきなさい」 「いいよ、伯母さん」 「圭市、遠藤力(えんどうちから)に宜しくな」 「和事兄ちゃん、ありがと。完全にコネだからね」 「遠藤はちょっと気難しいところがあるから上手くやれよ。スポーツカーだと目を付けられるぞ」 「逆に人気者になってやるよ」  俺はGTRに乗り、飯松ウィステリア工業へ向かう。明暗寺から車で20分程だ。入社式開始は10時。10分くらいは余裕がある。  3月の間に何度か飯松ウィステリア工業への道順を確認してる。ほぼ国道を通るから迷うことはない。  入社式もシティでやればいいのにな。まあ、車とロボットの部品を造る会社だから、仕方ないか。  飯松ウィステリア工業に着くと、【新入社員は左の駐車場に停めて下さい】と看板が立っていた。  既に数台の車が停まっており、人がちらほら居る。  俺はコネだから、入社試験を受けていない。御曹司の遠藤力を思いっきり利用してる、計画的に。顔は知らないけど。  俺はGTRを駐車場に停めると、緑色のユニホームを着た若い男性社員が来た。 「おはよー。BNR32か、良い車に乗ってるね~」 「おはようございます」 「君は新入社員だよね?」 「そうですよ。松本圭市です」 「ああ、君か。遠藤のコネで入ってきた大物は。俺は渡辺享(わたなべとおる)だ」 「宜しくお願いします」 「車には詳しいから、何でも聞いてね」 「ありがとうございます」 「構内の道を挟んだ向こうにある2階建て棟が事務所兼ロッカールームだよ。1階の入り口で新入社員に社員証を配ってるから」 「行ってきます」  俺はロッカールームの入り口へ歩いて行く。左側を見ると、緩やかな斜面に大きなプラント4つ確認できた。 「新入社員の方ですね? お名前は?」 「松本圭市です」  オバチャンOLが社員証を渡してくれた。 「この社員証はカードキーにもなっているので、なくさないようにお願いします」
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