03(飯松藤工業)

3/26
前へ
/183ページ
次へ
 俺は社員証をパネルにかざし、男性用ロッカールームに入ると、クラスメートだった、下平が居た。茶髪だが、間違いない。下平明人(しもだいらあきひと)だ。味方が居て良かった。もうユニホームに着替えてるな。 「よう、下平。ここの会社受かったのか」 「まっつぁん? まっつぁんも飯松ウィステリア工業に? 入社試験に居たっけ?」 「顔パスで入社したよ」 「どういうこと?」 「ズバリ言うと、コネだ。従兄とここの御曹司が仲良くてさ」 「まっつぁんのスペックの高さも評価されたんじゃないの? ウォーライフで前人未到の100連勝したんでしょ」 「この1ヶ月で130連勝まで伸ばしたよ」 「スゲー! 早く着替えてきなよ。グリーンのユニホームってダサいけど。あと、御曹司って遠藤力でしょ。ヤバい奴みたいだよ」 「ああ。遠藤は気難しいみたいだけど大丈夫だろう」 「じゃあ、講堂で待ってるから」  俺は自分のロッカーを社員証のナンバーを見ながら探す。1周回って入り口付近だった。  俺は入社試験を受けてないから、勝手が解らない。まあ、徐々に慣れてくか。  ロッカーを開け、ジャケットを脱ぐ。中には緑色のユニホームと帽子が入ってた。サイズが合ってれば良いけど。 「良い筋肉だな、君」  いきなり、後ろから声を掛けられた。俺は振り向き、自慢話をする。 「柔道初段なんですよ~」 「へ~! 凄いね! 得意技は?」  話し掛けてきたオッサンは感心してるようだ。 「背負い投げ、内股、大外刈ですかね」 「体力を遣うから、君なら大丈夫そうだね。私はB棟のライン長の小宮山(こみやま)だ。宜しくね」 「松本圭市です。宜しくお願いします」 「後でプラントを案内するから、またね」  俺はウェアラブル端末の時計を確認する、9時57分。マズイ、急がないと!  電話で確認しておけば良かった……。ユニホームがピチピチだ。  俺はロッカールームを出ると、近くのドアに【この先、講堂】と書かれていた。  社員証をパネルにかざし、階段を上る。 「それでは、着席して下さい」  イカン、始まった。  講堂は食堂も兼ねてるのか。左側に厨房がある。2~300人は座れる、だだっ広い所だ。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加