02(春休み)

2/2
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
 俺はGTRに夢中になってたら、後ろから声を掛けられた。 「わっ、和事兄ちゃん……。GTRが届いたよ」 「まさか、それで出社するつもりか?」 「あ~たりま~え~」 「軽自動車のがいいぞ。売ったらどうだ?」 「情けないモビルスーツで24時間戦えない。これはニュータイプ専用機だよ」 「まあ、そこまで拘るなら止めないよ」  和事兄ちゃんはやれやれって感じで境内に戻って行った。  俺は運転席に座る。格好いい。インテリアに純正3連メーター。電圧計、油温計、ブースト圧計。  フロントトルクメーター。タコメーターは8000回転がレブリミット。スピードメーターは時速320キロメートルまで計れる、純正じゃない。メーター交換してるってことは、走行距離を巻き戻してるかもな。  俺はGTRのエンジンをかけてバックで白線の中に駐車する。直列6気筒のサウンドは最高だ。ドアを開けたまま、後ろを見ながら停める。ギアをニュートラルにして、サイドブレーキを引き、ミッション終了。事故車とは言え、ボディーに目立った傷はない。ぶつけないように、慎重にやった。シティのシミュレーションとリアルはかなり違う。リアルは更に五感を研ぎ澄まさないといけない。  俺はGTRに鍵をかけて、部屋に戻る。  あれを100万ドル貯める足掛かりにするか? いや、ダメだ。GTRを手放したら、終わりのような気がする。  俺はヘッドマウントディスプレイを被り、シティに簡易ログインする。 『シティへようこそ、松本圭市様』  バーチャル案内アニマルの秋田犬、スィフルはワイプの中で尻尾を振っている。 「簡易ログインだ。俺の預金残高を教えて」 『82万円です』 「あれ? 90万円以上あったと思ったけど……。入社間際にしては貯めてる方か?」 『12万円引き落としです』 「何で!? 94万円だった?」 『自動車の贈与税です。良太様から受け取りましたよね?』 「バレてたのね、アハハ」 『R32スカイラインGTRは人気車種です。当然、査定額も高くなり、贈与の非課税の上限、110万円を大幅に超えてます』 「だよね~。仕方ない、俺は高額納税者だ。警察にGTRの警備をしてもらおうか」 『それは車両保険に入ってください。自賠責保険は既に支払い済みです』 「同じ車は2つとない」 『私には解りません』
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!