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俺はGTRに夢中になってたら、後ろから声を掛けられた。
「わっ、和事兄ちゃん……。GTRが届いたよ」
「まさか、それで出社するつもりか?」
「あ~たりま~え~」
「軽自動車のがいいぞ。売ったらどうだ?」
「情けないモビルスーツで24時間戦えない。これはニュータイプ専用機だよ」
「まあ、そこまで拘るなら止めないよ」
和事兄ちゃんはやれやれって感じで境内に戻って行った。
俺は運転席に座る。格好いい。インテリアに純正3連メーター。電圧計、油温計、ブースト圧計。
フロントトルクメーター。タコメーターは8000回転がレブリミット。スピードメーターは時速320キロメートルまで計れる、純正じゃない。メーター交換してるってことは、走行距離を巻き戻してるかもな。
俺はGTRのエンジンをかけてバックで白線の中に駐車する。直列6気筒のサウンドは最高だ。ドアを開けたまま、後ろを見ながら停める。ギアをニュートラルにして、サイドブレーキを引き、ミッション終了。事故車とは言え、ボディーに目立った傷はない。ぶつけないように、慎重にやった。シティのシミュレーションとリアルはかなり違う。リアルは更に五感を研ぎ澄まさないといけない。
俺はGTRに鍵をかけて、部屋に戻る。
あれを100万ドル貯める足掛かりにするか? いや、ダメだ。GTRを手放したら、終わりのような気がする。
俺はヘッドマウントディスプレイを被り、シティに簡易ログインする。
『シティへようこそ、松本圭市様』
バーチャル案内アニマルの秋田犬、スィフルはワイプの中で尻尾を振っている。
「簡易ログインだ。俺の預金残高を教えて」
『82万円です』
「あれ? 90万円以上あったと思ったけど……。入社間際にしては貯めてる方か?」
『12万円引き落としです』
「何で!? 94万円だった?」
『自動車の贈与税です。良太様から受け取りましたよね?』
「バレてたのね、アハハ」
『R32スカイラインGTRは人気車種です。当然、査定額も高くなり、贈与の非課税の上限、110万円を大幅に超えてます』
「だよね~。仕方ない、俺は高額納税者だ。警察にGTRの警備をしてもらおうか」
『それは車両保険に入ってください。自賠責保険は既に支払い済みです』
「同じ車は2つとない」
『私には解りません』
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