第1章 家政婦を依頼したら執事が来ました。

4/32
508人が本棚に入れています
本棚に追加
/247ページ
「エリノーラ……」 少しずつ近付いてくる顔に静かに目を閉じるとまた、ぽろりと涙が落ちた。 ……ああ、これでやっと、ライオットと一緒になれるんだ。 ライオットの唇が――。 どさどさどさーっ。 廊下から聞こえた、なにかの崩れる音に集中が途切れた。 「あー」 キーボードの上で止まった手。 思わず音のした方に向いた顔だが、のろのろとまたデジタルメモの小さな画面に視線を戻す。 見に行った方がいいのはわかるが、いま、エリノーラとライオットが身分差を越え恋人同士になり、初めてキスするいい瞬間なのだ。 こんなことで気が逸れたのが惜しいくらい。 ……死ぬわけじゃないし。 それよりもいまはこっちが大事。
/247ページ

最初のコメントを投稿しよう!