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「エリノーラ……」
少しずつ近付いてくる顔に静かに目を閉じるとまた、ぽろりと涙が落ちた。
……ああ、これでやっと、ライオットと一緒になれるんだ。
ライオットの唇が――。
どさどさどさーっ。
廊下から聞こえた、なにかの崩れる音に集中が途切れた。
「あー」
キーボードの上で止まった手。
思わず音のした方に向いた顔だが、のろのろとまたデジタルメモの小さな画面に視線を戻す。
見に行った方がいいのはわかるが、いま、エリノーラとライオットが身分差を越え恋人同士になり、初めてキスするいい瞬間なのだ。
こんなことで気が逸れたのが惜しいくらい。
……死ぬわけじゃないし。
それよりもいまはこっちが大事。
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