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結局、部屋に閉じ込められたあの日、窓からの脱出を試みたものの、着地に失敗して足を捻挫。
いまもまだ、歩行に支障をきたしている。
「だって切羽詰まってたから……」
打ち合わせできた編集部、気まずくなって淹れてもらったコーヒーを紅夏は啜った。
葛西紅夏は大学在学中にTLノベルのレーベルであるラズベリー文庫の公募で入賞し、大藤雨乃の筆名でデビュー。
二十四歳の現在も、プロの小説家としてTLノベルを書き続けている。
桃谷はデビュー当初から紅夏を担当しているラズベリー文庫の編集者だ。
年が近いこともあって、結構気軽になんでも話す。
桃谷はネイルできれいに整えられた手を携帯に載せたまま、おかしそうにくすくすと笑い続けている。
「でも、気をつけてくださいよ?
ほら、あんな事件があったばかりですし」
「あんな事件?」
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