第1章 家政婦を依頼したら執事が来ました。

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結局、部屋に閉じ込められたあの日、窓からの脱出を試みたものの、着地に失敗して足を捻挫。 いまもまだ、歩行に支障をきたしている。 「だって切羽詰まってたから……」 打ち合わせできた編集部、気まずくなって淹れてもらったコーヒーを紅夏は啜った。 葛西(かさい)紅夏は大学在学中にTL(ティーンズラブ)ノベルのレーベルであるラズベリー文庫の公募で入賞し、大藤(おおふじ)雨乃(あまの)の筆名でデビュー。 二十四歳の現在も、プロの小説家としてTLノベルを書き続けている。 桃谷はデビュー当初から紅夏を担当しているラズベリー文庫の編集者だ。 年が近いこともあって、結構気軽になんでも話す。 桃谷はネイルできれいに整えられた手を携帯に載せたまま、おかしそうにくすくすと笑い続けている。 「でも、気をつけてくださいよ? ほら、あんな事件があったばかりですし」 「あんな事件?」
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