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えぇ……と口を尖らせる先輩を無視し、射込みをするために足を肩幅ほどに開く。
先輩は、私が練習に入ったのを察して、口を閉じて姿勢を正してくれた。
……別人かと見紛うほど、真剣な瞳。
でも、口元は緩やかな弧を描いていて。
先輩のその姿勢が、いつも私を安心させてくれる。
深く深呼吸をして、型通りに身体を動かし、弓構える。
ここから打起しといって、弓矢を持った両方の手を上げる動作をする。
そして、要となる引分け。
弓をぐっと引いて――止める。
会という、弓を射る直前の動作だ。
打起しまでで使った筋肉を落ち着かせ、ブレのない矢を放つための準備。
そして、6秒ほど精神統一を兼ねてから――。
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