第八章 花と水

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浪士組に加われば幕府の召し抱えとなる。つまり、近藤や土方がかねてから切望していた武士になれる。 まさに千載一遇の機会であった。歓喜に沸き立つ面々のなか、総司は浪士組がいかなるものか、ではなく近藤が自ら浪士組に加わり京へ赴くのかということのみに耳をそばだてていた。 近藤が行くなら自分も行く、江戸に留まるならば総司もそれに倣う。それだけだ。他のことは些末なことだ。 しかし、総司の思いと近藤の願いはどうやら異なっていたらしい。 近藤は総司に江戸に残り、この試衛館道場を継いで守っていくことを強く望んだ。 恐らく近藤に本気で楯突いたのはこれが最初で最後だったと思う。今ならそれが近藤の最大級の優しさであり、愛情だったのだと分かるが、それでも総司はあの時「はい」とは頑として言わなかった自分を思いっきり褒めてやりたいと思う。
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