第一章 それぞれの戦いへ

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「どんな形でも良い。私が生きていて戦っていること、遠く離れた仲間に知らせたいのです。」  それで少しでも敵の目が自分に向けば江戸を発ったばかりの土方さんを無事に仲間の元へ返す手助けになるかも知れない。  江戸に、まだ新政府軍と戦う意志のある者がいると思わせることが出来れば相手を搖動出来、戦況が少しは変わるかも知れない。  本音はやはり後方支援や精神的な支柱となるよりも自分の行動が新選組の役に立っているという自覚が欲しい。  そんな思いから考えた事ではあったけれど、口には出さなかった。 「それと」  総司は話を続けた。 「今まで新選組として過ごしてきた日々や、私が関わってきた人たちの事を書き遺したいのです。京では壬生狼と恐れられ、今はすっかり賊軍扱い。この戦に勝っても負けても、私たちの印象は決して良いものではないでしょう。…きっと新選組は最後まで戦います。正直戦況は良くない。もし、この戦に敗れれば新選組の扱いは酷いものになるでしょう。何せ沢山の浪士たちを斬ってきましたから。あちらは私達を目の敵にしている。もしかしたら『史上最悪の人殺し集団』と歴史に名を残すことになるかも知れませんね。だから、私は私の見た『誠』を書きたいのです。最期まで、新選組として戦わせて下さい」
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