第八章 花と水

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お互い一歩も引こうとしないなか、一石を投じたのは土方だった。意外にも土方は近藤の味方をするでもなく、こう言った。 「総司の好きな様にやればいいじゃねぇか」 近藤は納得いかないようで「でもな、トシ」やら「そうは言ってもなぁ」と今度は土方の説得を試みたが、とりつく島もない様子で、最後には「総司ももう大人だ」と土方にピシャリと言われてしまい、ぐぬぬ…とくぐもった声を上げてからは暫く黙ってしまった。   決着が付いたと言わんばかりに土方は黙って立ち上がると皆に背を向けてさっさと部屋を出て行ってしまった。慌てて追いかけた総司が障子戸を開けると、部屋から少し離れた先で待っていたとばかりにニヤニヤと笑みを称えた土方が立っていた。   土方に礼を言わねばと思って出てきたものの、その顔で感謝の言葉は引っ込んでしまった。その代わりに芽生えた疑問が素直に口をついて出てきた。 「何故私に賛同してくれたのです」
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