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江戸・今戸八幡宮。日中であるにも関わらず、町の中心から外れたこの場所はしんと静まり返り、ゆっくりと時が流れていた。
春の柔らかな日が差すここの一室で布団の上に痩せ細った身体を起こし、開け放たれた障子戸から沖田総司はいつもと変わらぬ穏やかな庭先を眺めていた。
とりわけ面白いものがあるわけでもない。
たまに飛んでくる小鳥や忍び込んではすぐに走り去る猫、風に揺れる草木をぼんやりと焦点が合っているのかも分からない両の目でただただ何を追うでもなく一点を見つめていた。
彼にとって今はこの布団の上から見える世界が全てだった。
病に蝕まれ、骨と皮だけになった青年を誰がほんの数ヶ月前まで京の都を颯爽と駆け回り、人斬り、壬生狼と恐れられた新選組の中でも一番の剣の使い手と謳われた『新選組の沖田総司』と信じるだろうか。
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