第一章 それぞれの戦いへ

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 暫くして総司の部屋から出た弟子の手には、日中総司が書いた大きな『誠』の旗がしっかりと抱えられていた。  自室へ向けて縁側を進みながら、松本はそれを横目に流し見る。 「本当にやるつもりか?」 「勿論です。約束を違うわけにはいきません。それに・・・何故か力になりたいと思わせられます。彼には」 「お前もか」  優しい表情の弟子の笑いに、呆れ混じりの笑いを重ねてそう呟くと、松本は突然足を止めた。  弟子もつられて足を止め、松本の顔を見ると今まで見たことのないような、辛く、自分を責めたような顔がそこにあった。 『身を切られるような思い』の時、人はこのような顔をするのだろう。 「・・・少し話さないか?」  弱々しく発せられた言葉には、いつもの自信や強気さは微塵も感じられなかった。  しかし、それにはいつも以上に人を動かす力があった。  弟子が小さく首を縦に動かすのを確認すると、医療道具を抱えたままにも関わらず、そのまま2人は縁側を降りて草履を履くと連れだって出かけて行った。
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