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しかし、総司も引いてはいられなかった。
土方が部屋に顔を覗かせた時、嬉しさと同時にこれが最後の機会だと心に決めていたことがあった。
居住まいを正すと、ゆっくりと口を開く。
「・・・土方さん。私も連れて行って下さい」
「駄目だ」
総司の様子に彼が何を言おうとしているのか予想がついたのだろう。
土方は冷静さを取り戻し、いつもの調子でぶっきらぼうにそれだけ答えた。
「お願いします。私にはもう時間が残されていない。土方さんだって分かっているのでしょう?どうせ死ぬなら武士として戦っ・・・!!・・・げほっ・・・げほっ・・・」
思わず声を張り上げ、咳込んでしまった。
それでもなんとか続けようとする総司の背を優しくさする土方の顔には心配と不安の色が浮かんでいた。
だからこそ言わねばならぬと思ったのか、口を開く。
「こんな状態でどうやって戦うつもりだ。さっきも言っただろ。俺たちは勝つために会津に行くんだと。お前みたいな死に場所を求める者がいれば隊の士気が下がる。はっきり言って今のお前は足手まといだ」
冷たい言葉だった。
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