僕と彼女

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僕と彼女

「ねえ!巧也!」 僕の耳にそう刺さる。 無愛想に、漫画の本を開き捲りながら横になった状態のまま、「何?」と言った。 いや、勝手に人の部屋に入って来ては、毎回こんな感じであり、何一つ、不思議ではない。 お隣近所であり、ドアからではなく、窓から入ってくる彼女。 ちょうど、窓と窓の隙間にもほんの何ミリかであり、来れない訳でもない。 もう、この光景に慣れてしまっている僕がいた。 「ねえ!巧也ってば!」 「…うん…」 「だからさ、この漫画の男の人、拓哉くんに似てない?」 「…」 耳には、届いている。 しかし、漫画に夢中になっている僕は何も返さず、ただ、読んではページを捲り続ける。 「巧也ってば!」 僕の目の前に見えるのは、?をむっとさせた彼女だった。 「…」 覗き込んだ彼女は、僕を見て、「はーぁ」と溜息を吐く。 「何?」 そう僕が口にすると、再び、「はーぁ」と溜息を吐いた彼女。 「…」 漫画の本を閉じる。 「何?」 「…」 「え?」 「…やっぱり、聞いてなかったんだ…」 口元を少し曲げ、拗ねたような表情を僕に向ける。 「だから、この漫画の男の人、あの高嶋拓哉くんに似てない?」 「…そう?」 「似てない?」 「…似てるんじゃない」     
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