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不安と憂と、少しばかりの希望と
昨日周りに押されて夜中に市街地へ赴いた時、私は人生四度目タバコを燻らせていた。まともに吸ったのは今回が初めてだった。
初めのうちに感じていた舌を焼くような気持ち悪さや、喉に残る煙と芳香剤を混ぜたような異臭を感じることはできず、ただカッコつけているというつまらない事実と、少しばかりのノスタルジアが、肺のあたりに残るばかりだった。
そうして空に浮かぶ綺麗でも感動的でもない月を見上げて思うのだ。
「ああ、多分私は間違っている」、と。
この十九年、私は平凡のうちに生きてきた。
勉強もそこそこに、部活もそこそこに、恋愛もそこそこに、そうしてそれは非常に楽な人生であった。
テストで0点を取ったり、県大会にあと一歩で届かなかったり、数ヶ月ほど別れた恋人に未練を感じることもあったが、それでも自殺したりするほど深く思い悩むこともなかったのである。
きっかけなどというものはいつだってつまらないものだ。アニメキャラに憧れて声優になったり、誰かの映画に触発されて映画監督になったり、そうして人は自らが富や地位、名声を手に入れた時に、さも自らの原点を大げさに物語るのだ。
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