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それは、突然だった。 いつも通りの目覚まし、いつも通りの母の声。 全ての音が、碧には小さく聞こえた。 「…母さん、声小さくなった?」 そう聞くと、母ははっとした顔をしてどこかに電話をし始めた。 【病院予約してるから、待ってて】 母が電話をしながらも手元のメモに走り書きでそう書いたことでようやく、碧にも状況が把握できた。 電話をしていることは分かるが、内容はほとんど聞こえずわからない状態だった。 受話器を置くと、母はメモにさらさらと何行か書き込んで碧の目の前に差し出した。 【病院の予約が取れたから、学校休んで行くよ ①いつから聞こえなくなったか ②どれくらい今聞こえているのか ③大きなストレスが最近あったか 聞かれると思うから思い出しておいて とりあえず朝ごはんを食べよう】 碧がこんな状態でも落ち着いている母に安心して、ご飯に手を伸ばす。 全ての音が小さく聞こえる以外は何も問題のない、平和な朝だった。
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