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1、折れない恋心
「かっこいいなぁ」
田中梨々花は小さくつぶやく。
視線の先にいるのは音楽部の部長をつとめる竹下星也。新入生歓迎会と称した部活紹介イベントのステージに立ち、バンドメンバーと一緒に、はじけるような笑顔で楽しそうにベースを弾いていた。
「去年よりかっこいい」
新入生のほうをチラッと見て、梨々花は口をとがらせる。
「絶対またファン増える」
「入部希望は男子のほうが多いかもよ」
一緒にステージを見ていた木野桜子が、なだめるように言った。
「ううん、女子が多いに決まってる。去年だってそうだったし」
「でも、最終的に残った女子部員は私らだけじゃない」
「そうだけどさ」
梨々花はステージに視線を戻す。
「あたしみたいに竹下先輩めあての子が来る確率は高いよね」
音楽部内で組まれているいくつかのバンドのなかで、竹下のバンドだけは三年生のみで構成されている。いわゆる邦ロックの曲が得意なバンドで、この場は新入部員の勧誘が目的なので、人気バンドの曲やアニメ主題歌などを演奏している。新入生たちの様子を見ると受けは悪くなさそうそうだ。
去年、梨々花はこの新歓のステージで、一学年先輩の竹下に一目惚れした。
初心者で入部して、彼にマンツーマンでベースを教えてもらい、先輩と後輩としてはかなり親しくなれたと思うのだが、そこから先に進むことが出来ないでいる。
「どうしたら本気で好きってわかってもらえるんだろ……」
竹下への片想い歴は今日で丸一年――梨々花はため息をついた。
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